専門家インタビュー/買取営業、ブランド品鑑定士が宝石を学ぶべき理由、宝石鑑別の方法について【日本宝飾クラフト学院】

専門家インタビューシリーズ/リユース・買取業界専門の転職サービスやスキルアップ支援を行うRe:転職が普段聞くことができない、専門家にインタビューを行い、リユース・ 買取業界の中で必要なスキルや知識について本音でお話を伺います。


今回は、日本屈指のジュエリースクールである日本宝飾クラフト学院で、買取店のスタッフや、出張買取の営業職、ブランド品鑑定士が宝石を学ぶべき理由についてお伺いしました。


Re:転職 山口 :

本日は御徒町にあります日本宝飾クラフト学院様にお邪魔をしております。
宝石学部 学部長の鈴木博樹先生にお話を伺います。よろしくお願いします。

日本宝飾クラフト学院は、どのような学校なんですか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

創立以来、”ジュエリーのプロの育成”をやってきまして

・デザイン
・製作
・宝石学

という3本柱で勉強ができる学校になっています。

東京校ほか、名古屋校と横浜校があります。

Re:転職 山口 :

鈴木先生のご経歴をお伺いさせてください。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

まこの日本宝飾クラフト学院で30年指導していますが、
現場で役に立つ知識や技術を教えたいと考えています。
学校でずっと教えているだけの先生にはなりたくなかったんですね。
なので、宝石の買い付けの仕事もやりましたし、販売や買取の仕事もやりました。宝飾にまつわるほとんどの職種を経験して、それを宝石学に活かすことを指導しています。

Re:転職 山口 :

たくさん現場経験をお持ちなのですね。生きた知識やスキルを学べるのはいいですね。
では、次にこの宝石学部で学べることについて、ぜひ教えてください。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

コースとしては以下の3つがあります。

・プラクティカルジェロモジー(宝石学資格PG)コース
・宝石品質判定講座
・Gem-A宝石学FGAコース

Re:転職 山口 :

具体的にどんなことが学べるのですか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

まず、プラクティカルジェロモジー(宝石学資格PG)コースについてです。
プラクティカルジェロモジーというのは、日本語で言うと「実用宝石学」という言葉になります。

現場でそんなに多くの機材を使わずに、自分の目を使って宝石の鑑別ができるようになる。
そんな技術を身につけるのがプラクティカルジェロモジーコースになります。

次に宝石品質判定講座です。宝石の鑑別にプラスして、宝石の価値(値段)の付き方を学ぶことができます。宝石の良し悪しがわかるようになります。

宝石・ジュエリーの買取現場でしたら、まずは「石が本物かどうか?」というのを見分けるのにプラクティカル・ジェモロジー(宝石の鑑別)の知識が役に立ちますし、「このジュエリーは買取するといくらになるか」という適切な値段をつけるためには、宝石品質判定の知識が役に立ってきます。

そして、3つ目のFGAコースというのは国際的な資格なので、約2年間の勉強が必要になってきます。現在、日本で取得できる国際的に通用する宝石の資格はFGAだけです。
※FGAコースの詳細はこちらから 

Re:転職 山口 :

FGA資格取得のための勉強を日本でできるのはこのクラフト学院だけなんですか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

ここだけですね。通学と通信の2つのコースで勉強ができます。

Re:転職 山口 :

この資格は、どんなことを学んでいく内容なんですか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

すごく幅広いんですけれども、基本的には、鑑定用の機材を使って、宝石の鑑別を現場で行えるような資格になっています。ただ、今は宝石の鑑定書にはすごく高度な技術も使われているので、それが一体何なのか?といったことも学んでいきます。

Re:転職 山口 :

そもそも、鑑別と鑑定というのは、宝石学においては意味が違うんですよね?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

そうですね、鑑別はこれが本物なのか、偽物なのか、合成なのか見分けることです。

(室内の宝石の見本を見ながら)例えば、これは合成石です。
合成石は天然石と同じ科学組成や結晶の構造を持っている人工的に作られた宝石類のことですね。宝石と同じような特性を持っていてガラスではない宝石ともいえます。こうしたこを見分けるのが鑑別です。

それに対して、鑑定(査定)というのは、値段を出すことを言います。要するに評価をしなきゃいけないので、値段を出すために、宝石の品質に関する知識が必要になるということですね。

Re:転職 山口 :

リユース事業者や買取現場で働かれてる方々は、その2ステップ(鑑別・鑑定)がわからないといけないですよね?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

そうなんです。ここが大変なところだと思うんですけれども、(4種類の赤い石の見本を見せながら)
例えば、ルビーのような赤い石がここにいくつかありますが、一見ルビーに見えますが、ルビーではなくて、合成ルビーだったり、赤色のガラスだったりします。

Re:転職 山口 :

この4種類はそれぞれ違うんですね。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

そうなんです、こうした場合は、値段をつける前には本物かどうか正体を見破らなければならないですよね。

Re:転職 山口 :

実際に、どのように鑑別するのか教えてください。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

はい、こちらは屈折計です。屈折計とは、宝石の屈折率を測る機械になります。
宝石には宝石ごとのおおよその屈折率というのがありますので、例えばこのコランダムという鉱物に見られる屈折率を測れば、当たりが付けやすいです。

今度は、これが本物かどうかを顕微鏡を使って見ていきます。石の中を拡大することによって人が作ったものなのか、自然がつくったものなのかを見分けることができます。

その他にも、先ほどの赤い石は下から光を当てて、この宝石鑑別用のルーペを当てると赤紫からちょっとオレンジっぽい赤に変わるんですね。

これを「多色性」というのですが、この宝石は一見、赤い宝石 に見えたかと思います。ただ、実際は赤紫とオレンジ色を持った宝石ということになります。こうした色の違いを細かく見ていくことで、 評価をすることができます。

Re:転職 山口 :

なるほど!買取の現場でもそういった機材などを使って、判断できるということですね。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

はい、さらに判断できるだけじゃなくて、お客様が納得するはずなんです。
実際にこの鑑別・鑑定の様子をお見せすることによって「私のジュエリーはこの位のグレードなんだ」と受け止めていただけますね。個人的には、秤の上の乗せて 「おいくらです!」と言うのはちょっと強引な方法ではないかと思っています。

Re:転職 山口 :

こうした内容を総合的に学んでいける講座をご準備されてるということなんですね。
講座受講には実際どのくらいの期間が必要になりますか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

買取現場で使える鑑別技術を身につけるプラクティカル・ジェモロジー(宝石学資格GP)コースは、取得するのに6ヶ月となります。

宝石品質判定講座は、期間は設けていないんですが最短で6ヶ月で取得可能です。

Re:転職 山口 :

通学して授業を受けるんでしょうか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

そうですね、通っていただくとこが必要ですね。やはり石は手に持って見ないといけないので。

Re:転職 山口 :

社会人の方も通学していらっしゃるですよね?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

はい。社会人と学生が半々ですね。仕事しながら勉強する方もいれば、普通の学生として昼間に通っている方もいます。

Re:転職 山口 :

働きながらでも、通学できるのはいいですね!
リユース・買取業界のお仕事をされている方々は、石の鑑別や宝石が本物なのかどうか、ということと、品質に応じた値段を付けることができれば、スキルや知識としては十分でしょうか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

本来のスキルとしては それで十分なのかもしれないですが、私が現場で一番感じたことがあります。それは、アンティークジュエリー、宝石の歴史についての認知不足です。
そもそも日本にもアンティークのジュエリーが存在しています。日本ではジュエリー鑑別の勉強は進んでいるんですが、歴史的な勉強が追いついていないので、残念ながら買取店では秤に乗せられてそのまま溶かされてしまっているという現実があります。

Re:転職 山口 :

そんなんですね、私たちはなかなかアンティークに気づくこともできない、というか、そもそもあまり触れる機会が少ないように感じるんですが。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

そうなんですよね、これは日本とヨーロッパの文化の大きな違いだと思うんですが、ヨーロッパにはジュエリーのアンティーク市場というのもあるんですよ。日本ではその市場が育っていないんです。

Re:転職 山口 :

そうなんですね、授業の中では「これがアンティークだよ」みたいなことも教えてもらえるのでしょうか?

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

はい、アンティークの授業があります。

さらに、この学校の中には、装身具の研究室もあるんですよ。(※研究室の中は動画でご覧ください)

Re:転職 山口 :

こういった日本のジュエリーの歴史や文化とか、こういったことも少しこう学んでおくと、ジュエリーの未来も変わってきますね。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

そうなんです。正しい価値を知っておいて、お客様にこれは残すべきだよっていうアドバイスをすることも必要だということですね。何でもかんでも買い取っていいわけじゃないんです。

Re:転職 山口 :

本当にそうですね。宝石を取り扱うのは本当に奥深いですね。

日本宝飾クラフト学院 鈴木先生:

はい、奥深いし楽しいですよね。

Re:転職 山口 :

今日は貴重なお話ありがとうございました。

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